2025.05.01理美容

美容師としての「所作」が信頼をつくる──扉と引き出しをちゃんと閉めるという話

美容室の営業中、日常の中で見かける何気ない風景があります。

バックルームの扉が開けっ放し。
カラー材を取り出した棚がそのまま。
引き出しを開けたまま、誰かがその場を離れてしまっている。

こんな場面に出くわすたびに、僕は心の中でつぶやいてしまいます。

「閉めようぜ、ちゃんと。」

たったそれだけのこと。でも、そこには美容師としての姿勢が表れていると感じるんです。


お客様は“担当していないあなた”も見ている

美容室に来ているお客様は、想像以上によく見ています。

目の前のスタイリストの技術だけでなく、アシスタントの動きや会話、
レジでの対応、バックヤードでの様子──そうしたすべてが「サロンの印象」になるんです。

だからこそ、扉が開いたまま、引き出しが放置されたままの状態というのは、
「この人、片付けないタイプなのかな」
「ちょっと雑なところがあるのかも」
という印象につながりかねません。

もちろん、それを口に出す人はいないかもしれません。
でも、その違和感は“空気”として伝わります。

美容師の仕事は、技術だけじゃなく所作も見られる仕事。
だからこそ、細かな部分にも意識を向けたいところです。


「次に使う人」がいることを想像できるかどうか

引き出しを閉める、扉をしっかり戻す。

それだけで、次に使うスタッフがスムーズに動けます。
逆に、それができていないと、誰かが引き出しにぶつかってしまったり、
作業の途中で手間取ったり──そんな些細なストレスが生まれます。

こうした小さなストレスの積み重ねが、チーム全体の空気感に影響してくるんですよね。

たとえば、自分が使った道具を他の誰かが片付けてくれていたら、
「あ、次から気をつけよう」って思いませんか?

自分が受け取った気配りを、次にまた誰かに渡していく。
それが積み重なっていくと、サロンの雰囲気は確実に変わっていきます。


開けっぱなしの裏側には「焦り」がある

そもそも、扉や引き出しが開けっぱなしになってしまうのは、
たいてい“忘れた”とか“急いでいた”という理由がほとんどです。

・次の作業に気を取られていた
・時間が押していて、意識が回らなかった
・考えごとをしながら動いていた

そんな風に、焦りや余裕のなさが原因になっていることが多い。

でも、こうした状況が続くと、自分では気づかないうちに
「確認不足」や「注意散漫」の癖が身についてしまいます。

美容師の仕事にはスピードも求められます。
だけど、“落ち着きのない速さ”と“丁寧な速さ”は違う。

扉を閉める、引き出しを戻す──
それが自然にできているかどうかは、自分の中の“心の余裕”を測るサインにもなると思うんです。


所作は、技術と同じくらい大切な「信頼の要素」

どんなにカットやカラーが上手でも、所作が雑だと、その印象に引っ張られてしまうことがあります。

お客様が見ているのは、技術だけではありません。

・道具の扱い方
・立ち居振る舞い
・スタッフ間のやり取り
・会話のトーン

こうした一つひとつが、その美容師の“人となり”として伝わっていきます。

だからこそ、サロンワークの中で「見られている仕事なんだ」という意識を持つこと。
それが信頼を積み上げるための第一歩だと思います。


最後に|プロ意識は「当たり前の行動」に出る

忙しいときは、誰にだってうっかりはある。
完璧であろうとする必要はないし、間違えること自体が悪いわけでもありません。

でも、「気づけるかどうか」「次に直せるかどうか」は、やっぱり大きい。

・気づいた瞬間に戻れるか?
・次の人のことを想像できるか?
・習慣にして、自然な振る舞いにできるか?

こうした行動が自然にできるようになると、サロンの空気も整い、お客様からの信頼も積み重なっていきます。

扉を閉める、引き出しを戻す。
それだけで、あなたの仕事はもっと信頼されるものになるはずです。

美容師の仕事は、技術と接客の両立が求められる職業。
だからこそ、見えない部分での「丁寧さ」や「配慮」が、結果的に一番目立つところに表れてくるんですよね。

今日もひとつ、「閉める」を丁寧に。
そんな当たり前を、少しだけ意識してみてください。


Root4Beautyでは、こうした“日常の気づき”や“現場目線の学び”を共有しています。
次回の更新も、ぜひ楽しみにしていてください。


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